Ex.Field ランダム・コラム


(休掲中)

2005.09.20

 オーディオを趣味とされておられる諸氏は何処を目指しておられるのだろうか。好みの音質は人それぞれなれど、情報量やスピード、エネルギーバランス、音像定位などが高い時限で融合して「生演奏そのもの!」と感じるまでの音質性能に到達したなら、「好み」という範疇を超えて誰しもが認める本物の「音楽」であろう。それは、一曲毎にアーティストが目指す音楽を想い、ソースにあるすべての音楽情報を音に表し、オーディオ機器の存在を忘れるがごとくの真に迫る生々しい再生音楽であろう。そこに至る再生音楽はもうゴール間近と云えるだろうが、そんなオーディオシステムを創り得ている人など世界中見渡しても殆ど皆無と云える。チューンを重ねてきたオーディオシステムが最後に辿り着く問題点は何かというと、間違いなく位相問題だろう。


2005.09.12

 一般CDソースとSACDやDVDオーディオ系ソースは音質的にどこまで違いがあるのだろうか。概算だが、CDプレーヤーは22.7μ秒に一度65.5千階調の音楽情報を出力し、22.05kHzが再生上限となる。片やSACDやDVDオーディオシステムは5.2μ秒に一度16.78百万階調の音楽情報を出力し、96kHzが再生上限となる。その精度差1千倍以上! だが果たして、後者は前者より1千倍も情報量が増えて音も良く聴こえるかというと、どう聴いてもそのようには聴こえない。一般的に、「SACDの音は繊細なほど情報量豊かだ」、「DVDオーディオはダイナミックレンジが格段に広い」などと云われるが、CDの音はというと、ちゃんとD・A変換し、ちゃんとしたアナログフィルタ・バッファ回路を通せばSACDやDVDオーディオに劣らない優れた音楽が聴ける。つまり、CDの音質グレードは決してSACDなどに劣っていない、という事実をしっかり認識しておかなければいけない。要は「ちゃんとした」再生システムが構築できているか否かによって評価が180度も違ってくるという事。数年前SACDが世に出始めた頃、やっとアナログレコードを凌駕できる時代になったと騒がれたが、現在でもちゃんとチューニングされたアナログレコード再生システムと比べてSACDが音楽的に優れているとは決して云えないように感じる。
 ところが、当方ではCDでもアナログレコードに劣らない音楽性豊な再生音楽を奏でられると認識している。更に、CDはSACDやDVDオーディオと比べても殆ど差が無い音質グレードにあると断言できるほどの確信を得ている。僅かに差が聴こえるとするなら、20kHzに迫る超高域音の解像度だけだろう。これとて普通のスピーカーではまず聴けない。歪無く位相も殆ど狂わないベルズのような超高性能モニタースピーカーで何とか確認できる程度だから、その差がリスナーをフラストレートさせる事はまず無い。

 その前に、一般CDプレーヤーではなかなかそこまで鳴ってくれない事が最大の問題。例え高額機でも同様。CDプレーヤーの何処に問題があるかというと、DAコンバーター回路とデジタル基板、それにアナログフィルタ・バッファ部がそれ。SACD機やDVDオーディオ機でもCD専用機と同様の回路指向で作られている為、同類の問題を内包する。
 メーカーはどのモデルでも一様に多機能を目指す。その為素子数が増え、基板が大きくなってしまう。素子数を増やせば増やすほどノイズも増えてしまうのは当然の事。そのノイズがDAコンバーターICの動作に少なくない影響を与えてしまう為、本来ソースに刻み込まれている筈の音が歪められてしまう。その上OPアンプICを中心とした帰還型フィルタ・バッファ回路では、見かけ上の特性は優秀にできても音楽性に優れるマシンにはまず仕上げられない。それが一般的に市場で見るディジタル系オーディオ機器の実態、とは殆どの方が認識しておられないだろう。
 さて、それではCDの再生音をSACDやDVDオーディオに劣らないグレードで鳴らすにはどうすればよいのだろうか。答えは極めて簡単。別段、高額な装置やウルトラC的な技は求めない。以前からここに述べている通り、シンプルにシンプルに考える事が基本。必要な装置はシンプルな回路のDAコンバーターのみ。CDプレーヤーはトランスポートとして使い、コアキシャルでデジタル信号を取り出す。DAコンバーター・ユニットはできる限りシンプルな回路構成にコンパクトにまとめる事が必須条件。そして高性能トランス等による極めてシンプルなアナログバッファ回路にて送り出す事。多少ノウハウ的な要素はあるものの、只それだけ。
 当方ではこの構成でSACDやDVDに劣らない音質グレードのCDを鳴らし得ている。結果として録音の良し悪しまで明瞭に確認できる為、原音を変に加工している録音盤が如何に多いかがよく判ると同時に、リファレンス・ソースに使える盤が意外に少なくて少し困っている。

 ここに述べる事柄は俄かには信じられないという方も多いだろうが、CDソースに刻み込まれている音を完璧なまでに鳴らしたいと欲しておられる方は是非とも試されるようお薦めしたい。最近は安価に試作基板を作ってくれる業者が増えてきている。一般人でもプレーヤーを買い換える資金があれば十分に高精度な基板を製作できるだろう。結果、誰しもがCDの優れた音質性能を認め、SACDやDVDオーディオの必要性に今更ながら疑問を抱くに違いない・・・!?


2005.08.30

 先日、とある方からの問合せに、「CDではプリアンプを使った方がよいか、使わない方がよいか」というものがあった。この件も巷に様々な意見が氾濫しているようだが、当方は「要」と答える。何故なら、殆どのCDプレーヤーのアナログ出力はOPアンプICによるフィルタ・バッファ回路のものが多いため、音楽的情報量もさることながら、エネルギーや余韻までをすべて取り出すには、やや非力と考えざるを得ないからだ。本来は、CDプレーヤーに内蔵されているアナログバッファー部自体から問題にしなければならないのだが、ここではあくまでプリアンプだけにフォーカスして述べよう。最近のオーディオ愛好家の方々は大手・有名メーカーや雑誌社、販売店などにやや騙されている節があるように感じられる。というのは、高額オーディオ機器ですら豊富な情報量を目指している反面、音楽的エネルギーや空気感をもきちんと表現できているモデルとなると皆無と言いたくなる状況にあるからだ。我々オーディオ及び音楽愛好家の耳は、音楽を聴けば聴くほど音楽的エネルギーを欲する。CDプレーヤーから直接パワーアンプに繋いだ場合、程度の違いこそあれ、殆どの場合繊細な音楽情報は増幅してくれてもエネルギーまではなかなか増幅してくれない。では、その要因は何であろうか、またその事はどのようにすると確認できるのだろうか。ここが一般オーディオ愛好家に判りずらい部分。

 これまで何度か実験を繰り返した結果で現在得ている結論は、CDプレーヤーのアナログバッファ部のドライブ能力不足、残留ノイズの影響、及びケーブルを含めパワーアンプとの不整合が生じ易いこと、などであろうか。これらの事をどのようにして確認し認識できたかというと、単純にトランスと真空管で極シンプルなバッファ回路を作った事に始まる。そのバッファアンプをCDプレーヤーとパワーアンプの間に挿入し、電力的にも増幅してからライン出力トランスにて150Ωまで下げてパワーアンプに入力してみると、直接繋いだ時とはまるで違う音質で鳴るではないか。豊な情報量と弾むようなエネルギー感が見事だった。更に実験を重ねた結果、CDプレーヤーのアナログ出力はノイズフィルタを兼ねて入力トランスで受ける事が望ましい事、高gm低rp管による電力増幅が望ましい事、できる限り低インピーダンスに送り出すべき事、等がプリアンプに求められる条件であると認識した次第。

 アンチ・プリアンプ派の方は、CDプレーヤーとパワーアンプを直結した時の音こそリファレンス・サウンドであって、プリアンプを繋ぐとそのプリアンプの音になってしまうと思っておられるのだろう。が、さに在らず。上記の条件を満たすプリがあれば誰でもが必ずプリアンプの必要性を認めるであろう。ところが困った事に、有名メーカー製には高額機でもなかなか条件を満たすモデルが無さそうだ。何も真空管でなければならないことは無く、例えば接合型FETのコンプリメンタリ2組と優れた入力トランスさえあれば十分に高音質ラインプリができる。まあ、そんなにシンプルでは有名メーカーとしては高額モデルにしずらいから、見てくれの為もあって素子をたくさん使って複雑な回路にしている事例が多い。が、ラインプリこそはシンプルが一番。更に、できる事なら増幅素子はインピーダンス変換に徹して、増幅はさせない方が好いだろう。俄かに信じられない方は是非お試しあれ。

 少し本題から逸れる。高額機でもCDプレーヤーのアナログ出力ラインが意外にノイズまみれである実態は一般的に認識されていないようだが、実はレベルは低いが高周波スパイクノイズが途切れる事なく出力されてくる。通常、OPアンプによる帰還型フィルタ回路にて100kHzより高いノイズを打ち消しているが、フィルタ回路が在りながら何故ノイズが出力されてしまうのか。メーカーのエンジニアは肝心な事を見落とされているようだ。その高周波ノイズは、ホットラインだけではなくGND、つまりコールドラインにも乗ってくるという事を。これはまさに高周波理論に他ならない。ディジタル信号の遷移スピードは十分に高周波領域にあるのだから、ホット側だけをフィルタしてもコールド側は素通りでは、必ず音質に少なからず影響を与えてしまう。可聴帯域より遥かに高い周波数領域だから関係ないと考えたら大間違い。1周期の正弦波中に幾つものノイズが乗っていては良い音が鳴る筈がない。ではどのようにしてそのコールドノイズをフィルタするかというと、プリアンプの入力ラインのコールド側に僅か数ターンのコイルを挿入するだけでいい。もしプレーヤー側にそのコイルがあるのならプリアンプ側は勿論不要だ。が、そんな単純な事もメーカーのエンジニアは知らないのかもしれない。更にトランスそのものが素晴らしいフィルタ効果を発揮してくれるからこそ、プリアンプの入力には優れた性能のトランスを採用すべきと考える。アンチ・プリアンプ派の方、如何・・・。


2005.08.16

 真空管というデバイスを当方なりに色々な角度から検証し使ってきた結果、数十年以上昔に開発・製造された真空管が抱える多くの問題点が、構造も製造方法も当時と変わらないためもあってそのまま現代に引き継がれ、殆ど解決されないままになっている、と認識している。例えば、先日述べた通りヒーター/フィラメントの劣化、不活性ガスの存在、二次電子放出、電極の過熱、ハーモニック・ノイズ、動的直線性の悪さ、電極の微小振動、等など。最新管でも必ず同様の問題を持つ。諸先達も勿論これらの問題に気づいては居られたが、恒久的な対策を取る事は殆どなかったようだ。実に残念。これらの問題の中で、意外に認識されていない件が「電極の微小振動」。この件は何故起こり、どのような問題を引き起こすのか。この問題を採り挙げた記述をまったく見ない事からして、一般的には殆ど認識されていない問題だろう。半導体アンプに比べて真空管アンプの音が「中高音域が豊だ、艶っぽい、綺羅びやかだ・・・」のように聴こえる現象がこの問題に起因する。その根本要因は、真空中を電子が光同等の速度で飛び移る構造そのものにある。よくアンプのテスト時にダミーロードを繋いで測定するが、その時、どこからか小さな音が聴こえる筈。どこから聴こえるのかと探っていくと、何と真空管からではないか・・・という経験をされた方も居られるだろう。何故真空管から音が聴こえるかというと、カソード(フィラメント)から放出された電子が勢い良くプレートやグリッド電極にぶつかる。その時、電極が振動するから音に聴こえる。大出力になればなるほどはっきり聴こえるだろう。

 何故電極が振動するかというと、電子にも質量があるからに他ならない。スピーカーを鳴らす通常使用時、その振動音が電気信号に入り込んで音を滲ませる。特に直熱管が「中高音域が豊だ、余韻が綺麗だ・・・」のように聴こえる要因がこれ。実はその滲みこそは歪に他ならない。具体的な管名を挙げて判り易く言うと、普通の6SN7に比べて高信頼管のRCA5692(赤)が格段に良い音に聴こえる事例が多い。その理由は、5692こそ徹底した振動対策が施されている事に起因する。前段に採用される事が多い6SN7だから、音楽信号と一緒に微小振動による滲み音も増幅されて、よりはっきりした違いとして認識できる。更に、イコライザーアンプに使う6SL7とRCA5691(赤)ではその違いが顕著に表れるだろう。真空管アンプ製品を販売している当方がこんな事を述べるのは何だが、多くの真空管アンプ愛好家の方々は、その滲み音を歪と認識しないまま真空管独特の艶や余韻と思って一緒に聴かれていると云える。事実だから仕方がない。アンプに求められる本来の性能という観点で言えばソースメディアにある音楽情報が歪められてしまうと考えざるを得ない為、メーカーとしてはこの問題に何らかの対策を施さねばならない。が、真空管の構造そのものは変えられない。残るは回路構成で対策するしかないのだが、これが実に難解。よく逆相にして歪を打ち消し合わせる回路手法を見るが、異なった真空管同士ではこの手法による効果をそれほど期待できない。何故なら同種の管であっても微小振動の成分がまったく同じにはならないから。さて、どうしたものか・・・悩みが深い。

 十数年前から新たに開発された新型真空管が出回っているが、その多くが300Bや2A3の同等・類似或は上位互換特性の直熱管。真空管オーディオ愛好家にとって300Bが世界的に人気なのはわかるが、「何故」と言いたくなる。冒頭に述べた真空管の諸問題も引きずったままでは真の新型管とは言いずらい。その昔、「幻の・・・」と崇められた300Bが、今や駄球並みの価格と入手性にあるのだから、嬉しいやら悲しいやら。近年は徐々に品種もブランドも増えて、真空管アンプメーカーや愛好家にとっては恵まれた環境になってきたと云える。がしかし、当方からすると、「何かが足りない」ように感じられる。その何かとは、まだ漠然として具体性はないが、新開発の真空管をデザインする時のダイナミックレンジが狭く偏っているように感じられる事。一言で云えば「まったく新しいコンセプト」とでも言おうか、古い真空管技術や文化・意識から脱却し、素材、構造、規格、性能を最初から考え直し、最新技術を駆使して「新世代の真空管」を是非とも創造して欲しい。その新世代管に求める性能は、あらゆる面で旧開発管を遥かに超えるものでありたい。例えば、パワーMOSFETのように大電流低インピーダンスでも動作できたり、水冷にすれば単体でキロワット!もの出力が取り出せたり、100W程度の出力時には何十年使っても劣化しなかったり、動的直線性やSN比が半導体素子以上に優れていたり・・・。夢のまた夢であろうが、現代の最先端技術からしてその気になれば意外に不可能ではないように思うのだが。要はその必要性の有無と、造り手の情熱の問題だろうから、ビジネス本位のメーカーでは不可能に違いない。そんな新世代管を開発してくれる情熱的で採算度外視のメーカーがどこかに存在していないだろうか・・・。


2005.08.04

 過去に他人が為した事について今更とやかく述べたくはないが、真空管オーディオ愛好家の方々の将来を考えて敢えて述べておきたい件がある。その昔から数多く発表されてきた真空管アンプ製品も製作記事も、その多くが回路設計に配慮・認識不足、或は間違いを内包している事を真空管オーディオ愛好家諸氏は認識されておられるだろうか。おそらく殆どの方が「否」と回答されるであろう。実に悲しい実態。それが為に優れた音質性能を誇った欧米の希少銘球が、天寿を全うできずに殆どこの世から消え去ってしまった。この件はアンプメーカーのみならず、製作記事を発表された多くの執筆者や出版社の責任を問わなければいけない。製品化された真空管アンプそのもの、或は製作記事を手本にした多くのアマチュアによって希少管が急速に数を減らしていったのだから。では、その真空管アンプ回路の何処に問題があるかと云うと、何と云ってもヒーター(フィラメント)電源部であろう。更に、ヒーター電源の何が問題かと云えば、電源投入と同時に冷えたヒーターに信じ難いような瞬間大電流、「突入電流(ラッシュカーレント)」が流れてしまうという事実。この事にきちんと配慮されたアンプ製品も製作記事も殆ど見た試しがない。容易に差し換えできるという便利さから真空管は昔から消耗品的に考えられてきたが、現代はもうそんな時代ではない。であればこそ、ヒーター/フィラメント電源にもきちんと配慮しておかなければならない筈だが・・・。

 少し具体的に述べよう。例えば2A3の場合、フィラメントの定格は2.5V2.5Aだが、電源ONと同時に定格の「数倍(AC点火時)から十数倍(DC点火時)」もの瞬間突入電流が流れてしまう。但し電源トランスにそれだけの電流供給能力があると仮定してだが、実は小規模電源トランスでも瞬間電流負荷にかなり追従する性能があるため、何も配慮しなければ確実に瞬間大電流が流れてしまう。これは電源投入毎に必ず起こる現象だから、ボディブローのように徐々にダメージが大きくなってくる。そして短いと2年程度、長くても5年以内にはフィラメントが断線するか、或はフィラメントそのものに電子を放出する能力が無くなって寿命が尽きてしまう。これが今も尚製作記事でもアンプ製品でも殆ど留意されていない大問題であり、希少古典管を瞬く間に絶滅に追い込んだ元凶。この突入電流を防止する手立てはそれほど難しくはない。幾つかアイデアを挙げてみよう。その1)突入電流そのものが流れずらいように整流平滑回路とソケットのフィラメント端子の間を細く長い線材で結線する方法。その2)定格の半分以下の低い電圧でフィラメントのみプリヒートする方法。その3)半導体素子で定電圧回路を構成し、ゆっくり電圧が立ち上がるようにする方法。その1)の事例で云えば、2A3の定格2.5Aが流れるギリギリの太さの単線(Φ0.6mm程度)を20〜30cmほどの長さで配線し、中間に0.1〜0.2Ωの抵抗や100μH程度のコイルを挿入しておけば突入電流が殆ど流れない。因にこの方法で2A3を20年も無故障で使い続けている方も居る。

 昔、あるオーディオショップに行くと、かのWE社製300Bオールド管が大きなダンボール箱に山ほど積んであった。おそらく50本以上はあっただろうが、どれも皆フィラメントが切れたという事だった。店主曰く、「300Bってやつはフィラメントが弱くてね・・・」。このようにしてWE社300Bはこの世から消えていった。もう数十年前の事だが、アメリカ・ペンタゴンのある装置の電源部にWE社300Bが使われていたという事実をご存知の方も居られるだろう。連続稼動3万時間とも4万時間とも云われた信頼性の高さを買って、かのペンタゴンですら300Bを採用したという事例が示す通り、フィラメントの扱いにさえ配慮すれば永く安定して稼動してくれるのがWE社300Bだった。数多く発表されたアンプ製品にも製作記事にも300Bはよく採用されてきたが、その殆どがフィラメントに対して配慮が為されていなかった。腹立たしいほど悲しい実態、としか云いようがない。
 当方ではヒーター/フィラメント電源に電圧可変型レギュレーターICを採用して完全DC化し、電圧がゆっくり立ち上がる回路仕様にしている。更に、電圧出力ラインにコイルを挿入して万全を期している。何故コイルかというと、突入電流だけでなく通常使用時にACラインから乗って来る高周波ノイズをキャンセルさせる為。レギュレーターICはある周波数以上の帯域のノイズを素通りさせてしまい、稀にIC自身でも高周波ノイズを発生させる物もある。このノイズによってもフィラメントの動作や寿命に少なからず影響を与える。これらの事は直熱管に限らず、傍熱管にもそのまま当て嵌まると認識されておかれるように。絶滅寸前にある希少銘球達の為に、敢えて声を大にして言いたい。一つの真空管を信頼性高く長寿命に使う為の回路設計すら出来ない者が、真空管アンプを商品化したり製作記事を発表されるなどは笑止千万、一切止めるべし。そのような者が設計するアンプの音など、優れている道理がないのだから。

 過去に発表されてきた真空管アンプの回路を見るにつけ、旧来の回路に僅かに変更を加えた程度、或は一部に新種の部品を採用しているだけの何ら斬新と思える部分が無く、その音質性能も諸特性も従来機同等の範囲を出ないものが殆ど。真空管アンプ回路とはその程度でしかないのだろうか。一部では「既に枯れ切っている」と云われている真空管アンプ回路だが、果たして回路アイデアは本当に出切ってしまったのだろうか。「そんな事は断じてない!」と断言しておこう。それは枯れ切っていると思っている方自身の思考が枯れてしまっただけなのだから。まだまだやれる事、やるべき事はたくさん残っている。真空管アンプ愛好家及びクラフト系オーディオ愛好家に是非とも云いたい。「過去に発表された回路になど囚われる事なく、原点に立ち返って最初から考え直せ」と。さすれば真に斬新で優れた性能の回路が生まれるであろう事間違い無し!


2005.07.31

 我々メーカーにとっても、一般オーディオユーザーにとっても少なからず頭を悩ませる件にAC電源がある。日本の一般家庭の電源は交流(AC)50Hz或は60Hzの100Vだが、これが実は大いにクセモノ。オシロで波形観測してみればよく判るだろうが、綺麗な正弦波とはまるで云えない。波形そのものが歪んでいたり、細かなノイズらしいものがたくさん乗っていたり、時には小さくないレベルのスパイクノイズすら観測できる。この劣悪な電源環境でも最高音質を追求しなければならないのがオーディオメーカーなのだが、それにしても・・・である。一般的に1つの柱上トランスから幾つかの家庭に電源が供給されているが、各家庭にある家電製品からの影響でまさにノイズまみれ。この環境では幾らオーディオ機器内の電源部でフィルターしてもその電源ノイズが少なからず音に影響を与えてしまう。何故なら電源トランスやスイッチング電源の電源ラインのみならず、アースラインからもノイズが回り込んでしまうからに他ならない。波形が歪んでいれば力率に影響し、不定周波ノイズはDC化したオーディオ回路の電位を不安定にしてしまうのだから、このままでは最高音質性能など望むべくもない。そこで考え出された装置が、一旦DC化してから改めてAC波形を生成するインバーター式クリーン電源やアイソレーショントランスなどの交流電源装置。これらを旨く使えばそれなりに効果はある事を当方でも確認している。がしかし、彼等とて万能ではなく、別な問題が生じてしまう欠点もある。例えばクリーン電源では波形こそ綺麗だが接続されるオーディオ機器が何故か細身の音質傾向になったり、瞬間的な大電力負荷に対する追従性問題やインバーター回路が発する電磁波ノイズ或は輻射ノイズが少なくない事。アイソレーショントランスは特定周波数のノイズをバイパスしてしまいがちな為にスピーカーから聴こえる音も特定の周波数帯だけ滲んでいるような鳴り方になったり、大電流で使うとトランスそのものが唸り音を発したりと、なかなか一筋縄ではいかない。それでも、このような問題にきちんと配慮している電源装置メーカーもあるようだから相談されると好いだろう。特にソース機器やプリアンプにこれら電源を旨く使う事を推奨したいが、大電力パワーアンプには少し難しいかも。

 ピュアオーディオ・ユーザーはどんなに大音量でもアンプの出力で云う処の100Wを超えないだろうが、映画サウンドを楽しまれるAVユーザーは瞬間最大で何と200Wを超える時があるという。まあ、そんな音を出せる環境にあるユーザーも少ないだろうが、事実には違いない。そんな大出力時にはアンプの電源部はどうなっているのだろうか。どんなに優秀な製品でも、アンプ内電源部のレギュレーション問題から電圧降下を起こし、更には供給されるAC100Vそのものが過負荷による電圧降下を起こしてしまう。電流増幅の半導体アンプは電源部のレギュレーション性能が特に強力でなければならないが、電源インピーダンスの面でAC100Vの方が負けてしまうとそうなる。酷い場合、電力増幅部の電源電圧が通常+/−DC60Vであるものが、最大出力時には瞬間20V程も降下する事例すらある。それが日本の電源事情と云えよう。日本国は何故AC200V単相で入ってくる商用電源を宅内で100V2系統に分けてしまう規定にしたのだろうか、理解に苦しむ。オーディオ業界からすると致命的欠陥と言いたくなる環境を国が提供している、と云えるのでは。一部マニアの間で行われている事だが、エアコンなどに使われるAC200V動力電源をステップダウントランスにてAC100Vにしただけでも俄然音質グレードが向上するという事実。大出力パワーアンプには是非この方法を採りたいもの。現状では宅内配線がAC100Vしか取り出せない規定になっている事と、無理に使おうとしても漏電ブレーカーが働いてしまう。一般家庭の電源環境を一気に変更する事は不可能だろうが、もっと容易にAC200Vを使える選択肢もあって然るべきではないだろうか。これも時代に即した規制緩和の一つと考える。がしかし、一般的にはその必要性が認められないだろうから、まあ無理か・・・。


2005.07.27

 近年、全世界的に問題になっている知的財産及び著作権について、日本という国は認識度も危機感も足りないように見受けられる。著作権については俗に云う処の海賊版が横行して国際的な問題になってきているが、事実上はまだ野放し状態に近いだろう。特に隣国中国では政府の発表や取り組みと実際がまるでかけ離れているのが実態。違法と知りつつ人が創った音楽や映像ソフト、コンピューターソフト、人気ブランド商品などを大々的に模倣してビジネスを展開している。果ては「模倣した製品で金を儲けて何が悪い!」と開き直ってしまうのだから始末に負えない。早くビジネス面でも文化意識面でも世界に通用する国民になって欲しいが、四千年もの永い間そうしてきたのだろうから、まあ無理か・・・。このような実態にあるにも関わらず、日本国政府は何故もっと厳しく模倣品大国を追求しないのか、理解に苦しむ。

 当方にとっても無関心ではいられない件に知的財産権、つまり特許がある。日本の特許法を調べてみると米国などと比べて奇妙と言いたくなる決まりが幾つもある。その最も大きな部分は特許申請をすると間もなく(1.5年後)情報が公開されてしまう処。「何故!」と声を大にして云いたい。米国では特許が認められるまでパテント・ペンディング期間と云って情報は厳しく非公開にされるが、我が国は公開してしまう。更に、米国では専任の特許審査官がすべてを審査している。それに比べて我が国は、法人審査機関もあるが、彼等だけでは手に負えず大企業などのベテラン技術者が審査官を兼ねている。更には審査そのものから登録に関する一切を民間開放化との提言すら出されているのだから驚く。日本政府は知的財産価値というものを随分と軽く考えているとしか思えない。更には、審査期間が諸外国に比べてかなり長いというもの大いに問題だろう。我が国政府には、知的財産の取扱いについて米国並みの法整備と実務改善を強く要望したい。日本という国が戦後どのように復興し、どうやって現在の技術立国になり得たかをもっと真剣に考え、我が国がこれからも益々技術大国であり続ける意義や重要性を再認識してほしい。そして益々たくさんの知的財産を奨励し、その保護に努める事は国としての当然の責務と考えなければいけない。

 知的財産問題は実はもっと根深いと感じている。特許を申請及び取得する事は情報公開する事になるが、情報を公開したくない真に高度な知識や技術の保持者は特許申請しない場合が多い。更には「町工場」のような零細企業が長年培ってきた技術やノウハウから生み出される優れた部品や製品の数々。特に我が国が世界に誇れる技術に「金型」がある。この金型を駆使して作り出される部品類は世界最高水準の精度と品質を誇る。これも立派に知的財産に値するだろう。が、それは法的には知的財産とは扱われない。ところが、我が国はそれらすべてを含めて技術立国になり得たのだから、本来は何らかの保護政策があっても然るべきではないだろうか。我が国が培ってきた製造技術、品質意識、知的財産などは国の宝なのだから、安易に諸外国に流出してしまう事を是非くい止めてほしいと願うばかり。


2005.07.20

 実は最近「トランス(インダクタ)」にハマっている。といってもトランスを自身で巻く技術も設備も気力も当方では持ち合わせていないから、要望を汲み取って巻いてくれる専業メーカーの存在はとても大きい。それにしても、トランスとは何と妙なるデバイスである事か・・・と、使う度に思わせる。抵抗およびコンデンサーに代わる機能を半導体回路で代替する事は可能だが、インダクタを100%代替できる半導体回路はまだ無さそうだ。現代の半導体回路技術では代替はおそらく不可能だろう。何故なら、インダクタのみが成し得る優れた機能こそは、「起電」する能力にある。そのインダクタで1次側と2次側にアイソレートしたトランスという回路を構成すると、信号伝達、昇・降圧、位相変換、インピーダンス変換、ノイズキャンセル、絶縁などその能力は実に多彩。それでいて一つ一つの性能が大変優れているのだから、これを使わない手はない。半導体アンプでは殆ど電源部にトランスを採用しているだけだろう。信号増幅回路への採用事例を殆ど知らない。真空管アンプでも電源とチョークにのみトランスを採用している製品を多く見かけるが、真空管アンプこそもっともっとトランスを多用すべきと考える。何故なら高インピーダンスで動作する真空管回路はトランスに最も適したアプリケーションと云えるからだが、半導体アンプに比して最大出力値やダンピングファクタ値に劣る真空管アンプだから、せめて音質性能だけは高いグレードに居なければ真空管アンプそのものの存在意義が薄れてしまう。事実、増幅回路中にトランスを採用した場合とそうではない場合とでは明らかに音楽表現が違う。両者とも突き詰めていくと相当高いグレードの音楽表現をしてくれるが、真に生々しい空気感や余韻の表現などはやはりトランスを旨く使った方に軍配が上がるようだ。とは云え、トランス自身の性能や使い方次第でまったく違う結果になってしまうから要注意。トランス単体でもコア材やコア形状、巻き数や巻き方次第でその性能はピン・キリまで違ってくる。つまりトランスというデバイスは用途や求める性能に応じて作り分け、使い分けるべきデバイスという事になる。ただ残念な事に、昔からオーディオに馴染みが深かったパーマロイ系コア材の入手が困難になりつつあるらしい。理由は需要が激減した為。これも時代の流れか・・・。

 トランスの1次側を増幅素子の負荷と考えると、抵抗(半導体)負荷より遥かに適している事が理解できる。何故ならインダクタは起電力を生み出す、つまりスイングしてくれるからに他ならない。抵抗はスイングしてくれない。また1次側のスイングがコアを通じて2次側をスイングするが、その2次側に繋がる負荷によって音色が猫の目のように変化するのだから実に面白い。増幅回路中にトランスを採用する事で音質性能を自在に創りだす事は確かに容易になるが、我々メーカーにとってアンプ製品に求める本来の性能とは、例えトランスを採用してもしなくても入力された信号をそのまま増幅して送り出すだけであるべきだから、安易にトランスを採用するのではなく、トランスを採用する事で最終的に本来の性能に仕上げると考えるべき。そうでなければ「トランスの音」と云われるアンプになってしまう。トランスを採用する事で音質的に変わる部分とは、概ね響きの好さや艶、余韻などだろう。つまりは、真空管アンプユーザーに好まれる音色になるとも云える。処で、何故半導体アンプメーカーは信号増幅回路にトランスを採用しないのだろう。響きや艶といった音色の要素は半導体アンプに不足がちな性能の一つと云える。最新の素材と技術を駆使すれば数Hz〜200kHz近くまでフラット特性のトランスが入手できる。更にオーバーオールのNFBを止めてローカルNFBにするなど回路構成を工夫すれば、直結回路以上に優れた音質性能にできるだろう。元々ダンピングファクタ値に優れるトランジスタアンプなのだから、トランスによって音質を仕上げるというのも一興。是非トランスドライブの半導体アンプ製品を試聴してみたいが・・・。当方はトランスに限らずインダクタを真空管アンプ回路に多用してきた。これからも更に多彩な使い方をしていきたいと考えている。別な言い方をすれば、当方のこれからの真空管アンプにはトランス及びインダクタこそ必要不可欠。何故必要不可欠なのか・・・? やがて公開しよう。


2005.07.11

 暫く日にちが空いてしまった。理由は新真空管アンプ回路の開発に時間を取られていたため。詳細は後日ここに記したいと思う。

 今日は歪を持った音と持たない音の違いについて。歪にも様々な種類があるから一概にこれが歪と特定しないでおく。が、一般オーディオシステムには歪音が聴こえないものはないと云えるほど歪まみれ。カタログスペックにある歪率表記の事を云うのではない。本来ソースに録音されている筈の音がスピーカーから聴こえない、或は違って聴こえる場合も歪と定義すると、「歪まみれ」を理解できるだろう。この歪成分があるが故に人類はまだオーディオシステムで生演奏の音を完璧に再現できないでいる。録音現場はさて置き、再生系だけで云えばソースメディアの読み取りエラーに始まって、スピーカーの刺激的或はドロドロの鳴り方に至るまでの間に、本来の音楽信号はどれほど歪に汚染されてしまう事やら・・・。一般オーディオ雑誌の試聴レポート記事は、裏を返せばまるで歪の内容を解説しているかの如し、と云えるのではないだろうか。装置別に述べると、CD系プレーヤーの読み取りエラー及びノイズがソースメディアにある本来の信号を欠落させ、デジタルケーブルを通せばまた信号を歪め、D/AコンバーターのディジタルノイズやNFBたっぷりのアナログバッファ部で肝心要の音楽的エネルギーが削ぎ落とされ、不自然にワイドレンジで妙に広がり感のある音楽信号になる。ここまでで既に本来の音楽信号からかけ離れていると云える。アンプ機器に入るとNchとPch素子の整合問題や大電流増幅による反応の鈍さを高NFBで補うなど、益々立ち上がりの遅いエネルギー感に乏しいくせに煩い系の音に変貌し、スピーカーに至っては歪発生器とでも言いたくなるほど様々な歪を発生させている。ケーブル類でも導体の構造や絶縁素材が少なくない歪を発生させてしまうのだから、殆どのユーザーはソースにある筈の本来の音などまったく判らなくなっているのではないだろうか。これに位相問題や試聴環境問題が絡んでくるともう手の施しようがない。これらの問題を一つ一つ解決してソースメディアにある本来の音を鳴らそうとすると、少しオーバーかも知れないが、それこそ生涯懸けての大仕事になってしまう。だから「オーディオは止められない」のかも知れないが・・・。

 ではせめてどうすれば・・・という事を考えてみたい。まず自身の中から好みの音質という考えを捨て去って、徹底してモニター的に鳴らしてやろうとだけ考える事。これが基本。次に電気的に増幅されていない純粋生演奏を多く試聴する事。但し、客席に聴こえる音と録音マイクに届く音には少なくない違いがある事も認識しておかれるように。客席に聴こえる音は既に雑多な影響を受けて歪められている部分が少なくないであろうから。その生演奏のピュアな音を身体に刻み込んだら自身のオーディオシステムに向かおう。あとは試行錯誤あるのみ。スピーカーがモニター的に鳴ってくれない場合はスピーカーそのものから選び直す必要があるだろう。例えば米国製の有名大型ホーンシステムの場合、中高域音以上がどうしても煩くやや刺激的にさえ聴こえてしまう。何故なら金属製ホーンの広がり部分に起こる共振こそその刺激音を生んでいるからに他ならない。これも立派に歪音と云える。それがアメリカン・サウンドと愛でておられる方も少なくないようだが、それはもうモニター的とは別世界。その歪音を浴びるように聴かれている愛好家が居るとしたなら、それはある意味要注意。医学的見地から言うと、刺激的な歪音をある程度以上の音量で聴き続けた場合、そうではない人に比べて老齢になってから聴覚の衰える割合が大きいとの事。パチンコホールなどと同様。
 最近UHC−MOS(大電流MOS)FETなる新種デバイスを採用されているアンプ製品を見かける。が、これも決して音質に益する物とは云い難い。何故なら、素子の構成上の問題で耐圧が低く、入力容量が並外れて大きいため。実際に試聴されてみると容易に確認できると思うが、立ち上がりの反応が鈍く、切れが悪くモヤついた音質傾向が聴ける。UHC−MOSではないトランジスタ(FET)アンプでも同様の傾向にある製品が殆ど、というやや寂しい現実。半導体アンプは真空管とまではいかなくても、大電流を扱うが故に出来る限り高電圧で動作させるべきだろう。またD級と云われるディジタルアンプでは一見件煌びやかに聴こえるが、優秀なアナログアンプのように静けさや空気感までは表現し難いように感じる。それはディジタルノイズや歪が影響しているからに他ならない。CD系プレーヤーのD/Aコンバーター部にあるアナログバッファ回路は、後にアンプにて信号増幅されるのだから特に問題の個所。ノイズ成分を含んでいてもピュアな音楽信号を出力するDACチップだから、この部分こそシンプルにストレートに送り出す性能を持たなくてはいけない。その為に、ノイズキャンセル素子としてトランスでも挿入してやればその方が余程優れた音質になる。嘘だと思うなら是非試されてほしい。

 歪が殆ど無くなった音とはどんな世界だろうか。最初は随分と静かに大人しくなったように聴こえるだろうが、必要な時には圧倒するようなエネルーが迫り来る。それでいてタイトにシャープにまとまった音像がスピーカーの間にくっきり浮かび上がって微動駄にしない。まさに録音マイクに聴こえた音そのものだろう。このグレードに近い音は当方でも必ず実現したい目標だが、現時点ではベルテック社でしか聴けないだろう。どんなにハイエンドなオーディオユーザーでも決して鳴らし得ていないと断言しよう。是非ベルテック社に出向かれてみては如何。


2005.06.24

 オーディオを趣味とし始めてまだ間もない頃、見様見真似で真空管式とトランジスタ式のアンプを同時に製作した。結果、真空管アンプは旨く出来上がった。が、トランジスタアンプは電源オンして間もなく、火を噴いた。起爆個所は電源部。整流ダイオードが無残に吹き飛び、大型ケミコンは破裂した。原因はどうやら整流ダイオードの極性ミス。当時のケミコンにはまだPCBがたっぷり使われていただろうから、部屋中にカドミウムが撒き散らされ、身体も汚染されたかも知れないし、今も汚染が残っているかも・・・? その時から半導体に対するイメージが悪くなった気がする。が、懲りずに真空管とトランジスタ(FET)を比較するアンプの試作を繰り返してきた。特にFET単体の音質性能は真空管に劣らないとの確信を得るまでになったが、真空管に比べて半導体増幅素子は如何にも使いずらいし、世間一般使われている回路構成では真空管の音質性能に肉薄する事すらなかなか難しい。オーディオ用真空管の殆どはバイアス電圧をある程度深くしなければならない、という事はかなり感度が鈍い。それに比べて半導体増幅素子は極めて感度が高く、浅いバイアス電圧で適正動作ポイントになる。が、それはNchとPchをコンプリメンタリで使う事を前提にしている為。真空管と最も違うポイントがこのコンプリメンタリという考え方。これが半導体素子をオーディオ用アンプに使いずらくしている最大の要因であろう。トランジスタに比べて真空管は感度こそ鈍いが、実に様々な使い方が考えられてきた。ところが、トランジスタは殆どがコンプリメンタリ・プッシュプル、或は同極のSEPPが関の山。トランス負荷やシングル動作にしたトランジスタアンプ製品など未だ見た試しがない。数年前、SITなる三極管類似特性のパワーFETが話題になったが、これとて入力信号が実効10Vもあればフルスイングしてしまうデバイスだった。が、トランス負荷でも十分に使える特性だった事は嬉しく思った。それでも、SITそのものの単価が異様に高額だった為に主だったオーディオメーカーはついに採用せず、現在は生産が殆ど完了してしまったと聞いている。誠に残念。

 今更ながら思う事、それは真空管からトランジスタに移行する時、何故真空管同等の機能や特性の半導体デバイスをまず開発しなかったのか、と。最初はゲルマニウムによる接合型トランジスタが多く作られたが、パワー段に使える高電力損失のものはできなかった。シリコンがトランジスタに使われるようにるとキロワットに至る高損失パワートランジスタやMOS型パワーFETが作られるまでになった。が、ついに鈍い感度の真空管類似特性のトランジスタは開発される事がなかった。真空管類似特性とは何も静特性カーブだけを云うのではない。深いマイナス・バイアス電圧で動作し、できれば三極管のような静特性カーブのものが在って欲しかった。更にはスクリーン・グリッドのような電極のあるトランジスタがあればもっともっとオーディオが面白かったであろうに。無いものねだりをしても仕方ないが、せめてジャンクションタイプの高電力FETを、誰か開発してくれないだろうか。そうすれば真空管と組み合わせたりトランスを負荷にしたりと、面白いアイデアがたくさん考えられるのだが。勿論並のトランジスタアンプを凌駕するまでの音質性能には容易にできるだろう。当方も含め真空管アンプ愛好家が依然少なくないのは、半導体デバイスにその面白さや多様性が乏しい事も一つの要因となっているからではないだろうか。軽薄短小の高集積化ばかりが最先端半導体技術ではない。燃料電池が次世代の電気エネルギー供給源になるのであれば、その制御の為に新たな超高電力高耐圧半導体素子が求められるだろう。その時、真空管のような特性や機能のハイパワー素子が開発される事を期待しよう。・・・まあ、殆ど望み薄、といった処か。


2005.06.21

 我が国が世界に誇れる事は数多いが、もっと世間が認め、世界に誇るべき事が更に一つある。それは、「町工場」と云われて久しい日本の零細企業達。日本人の民族性なのだろうか、町工場の経営者達は彼らが誇る凄い技術を必要以上に売り込まない。否、売り込み方を知らないのかもしれない。が、時には世界的な大企業が無精髭顔に汗を滲ませてあくせく働く年配のお父さんにひれ伏してしまっている事例すらある。そのお父さんが長年培ってきた技術力を元に生み出される部品や機械類は、他社には真似できない恐ろしく優れた性能と品質を誇る。まさに「職人」の為せる技。物造りの原点がここにある。世はIT産業華盛りの時代であり、日本型ベンチャーが乱立している。また、政府も自治体もITベンチャー企業を支援する体制を整えつつある。がしかし、日本型ベンチャーの元祖こそは「町工場」であろう。彼らが持つ技術力や発想の豊かさこそは、世界に冠たる工業国日本の底辺を支える源。彼らが造り出す製品は、発展目覚しい近隣諸国が殆ど真似できない分野ばかり。彼ら町工場が作り出す製品は最先端IT業界やAV業界にも多大な貢献をしている事などあまり知られていない。例えば、CD系プレーヤーのピックアップ部、ハードディスクのヘッドや軸受、携帯機器のバッテリィ等など、挙げればキリがない。果ては米軍やNASAまで顧客リストにあるほど超精密加工を誇る。それに不良品が殆ど皆無である事も特筆に値する。

 しかしながら、経営に基礎体力の無い彼らは、激動の波に揉まれ、安価な輸入類似品などに取引先を奪われ、後継者が居ないまま静かに稼動を止めてしまう。そしてその町工場が培った技術は二度と戻らない。このようにして消えていった町工場は数知れず。政府や自治体が真に守るべきは、新興のIT企業などより、先ずは彼ら「町工場」であるべきではないだろうか。我が国は自由競争市場の元繁栄してきたのだから、取り立てて町工場に支援しなければならない理由がない、というのが役人の論法なのだろう。だが、失ってしまってからでは取り返しがつかない多くの宝が町工場にあると考えれば、存続させるための支援の形を考えるのも国や自治体の責務の筈だが・・・。また、「町工場」自身にも存続の努力を惜しまないで欲しいと云いたい。それが必ずや工業国日本を救う事になるであろうから・・・。


2005.06.18

 先日に続いて、大手家電メーカーの現状と将来像をもう少し考えてみよう。併せて日本のオーディオ・メーカーが辿った盛衰の路筋も考察してみたい。世界に一流メーカーとして知られた国内大手家電メーカーの殆どは家電事業の他にも基幹事業を持っている。その基幹事業の多くは一般民生ではなく、他業種大手メーカーや自治体、或は国外の企業やその国自体から請け負うインフラ整備事業や大掛かりなプラント建設事業が主。その収益は決して小さくない。他にも様々な事業を展開している事から「総合メーカー」と云われるまで発展を遂げたのが日本の大手家電メーカー。彼らにとって家電製品とはどんな位置付けにあるのだろうか。国内だけでも競合他社が少なくない業界である上に、最近は近隣諸国のメーカーも市場進出を果たして益々競争が激化してきている。それでも次々と新商品を市場投入しなくてはならないのは、営業利益確保は勿論、生産ラインの維持や雇用の確保など様々な意味があるようだが、それだけではない。家電製品の市場での特徴は、宣伝広告やテレビCMだけでなく、多くの販売店が製品を取り扱っている所為もあって実際に一般人の目に触れる機会が多い事。という事は、そこには身近に企業イメージを植え付ける戦略がある。良い企業イメージを維持する事は大変だが、とても重要な事と云える。製品の売上げを左右するだけでなく、そのイメージが他の事業製品にすら影響を与え兼ねないから。家電製品はまさに「イメージ戦略の広告塔」。家電ビジネスそのものは競合他社との価格競争もあってなかなか大きな利益など上がらないようだが、それでも商品を市場に投入し続ける理由がこれだろう。

 しかしながら・・・と思う事がある。性能、デザイン、価格・・・どれを採ってもメーカー間の違いやそのメーカーなりの独自性があまり感じられないという奇妙な状況がずっと続いている。何故そうなるのか、また市場は何故それを許すのか、理解に苦しむ。デザインも性能ももっと独自性が強くなければメーカーの存在意義すら薄れてしまうように思うのだが・・・。つまり競争を厳しくしているのは、メーカー自身ではないかという結論が見えてくる。また近年富に消費者が賢くなってきている、という事も各メーカーは認識しておくべきだろう。インターネット時代になって良質な情報が瞬時に豊富に入手できる時代だから、製品の比較情報やインプレ情報すら新製品発売間もなくから出回っている。更には動作に少しでも不具合が有ったり初期不良が起ころうものなら、その情報がネットを駆け巡る。メーカーにとっては攻めるも守るもまさに厳しい時代。であるとしたなら、ただ薄利多売を積み重ねる為だけの方向性を早期に考え直さなくてはないらない筈。事、薄利多売なら近隣諸国のメーカーの方が一枚も二枚も上手だろうから。

 近年の大手企業の動向の中で最も懸念を感じていた事が2つある。一つは生産コストが安いからと安易に中国など近隣諸外国に生産拠点を移してしまう事。もう一つは、それに伴ってせっかく培ってきた様々なノウハウや最先端技術が流出してしまう事。日本の大手家電メーカーの経営者諸氏はその多くがリストラを敢行し、海外に生産拠点を移す決定をされているが、実に安易で経営戦略に乏しい決断と云わざるを得ない。コストが見合わないからと国内生産を止めて海外に行ってしまうと、多くの従業員や下請け会社が路頭に迷うだけでなく、技術やノウハウの維持も発展も無くなってしまう。それが時代を見据えた企業努力かと云えば、おそらく誰しもがノーと答えるに違いない。日本の大企業に是非とも誘致したい近隣諸国の狙いは、雇用促進や地域経済発展だけではない。何と云っても日本の企業が誇る最先端技術やノウハウが喉から手が出るほど欲しいのだ。将来はそれらを活かして独自製品を開発して世界中に販売し始めるに違いない。結果、彼らがやがて競合他社になるであろう事は素人でも想像できる。経営者諸氏は、自社が長年培ってきたノウハウや技術というものをどのように考えておられるのだろうか。そんな事より目先の営業利益が最優先なのだろう。

 かつて繁栄を極めた日本のオーディオメーカーは、残念ながらその多くが姿を消した。或はブランドは残っていてもまったく別会社になってしまっている。ある有名ブランド企業で企画・開発から生産までを一手に任されていた人物から話を伺った事があるのだが、とても参考になる事柄がたくさん聞けた。がしかし、結果的にその企業が倒産同然になってしまったのは何故だろうか。その人物はこの話題には直接触れたがらなかったが、氏の言葉を総合すると、長年業界をリードする有名ブランドとしてやってきた歴史と自負があるために一つの製品体系に拘り過ぎた。またそこそこではあっても決定的な独自性や優位性のある製品ではなかった為、常に競合他社の類似品に脅かされ、ユーザーから見てそのブランド製品でなければならない大きな要素が少なかった。結果として、近年国内でやっと認識されるようになてきた「マーケティング戦略」が経営陣に殆ど無かったからではないだろうか。同様にして倒産或は撤退してしまった企業が少なくない。当方のような弱小個人企業ならともかく、多くの従業員を抱える企業にとって、経営陣の失敗はそのまま命取りになってしまう。大手家電メーカーとて同じであろう。ただ、大手企業であるだけに大儲けする事は少ない代わりに、多少経営に失敗してもすぐ倒産には至らない。為に、良い経営者が育たないとも云えるが・・・。

 現在も活躍し続けている有名国産オーディオブランドは極めて少ない。寂しい限り・・・。市場やユーザーに支持される製品作りをしてきた事が現在も存続できている大きな要因なのだろうが、彼らとて決して安泰ではない事は自身がよく認識している事だろう。単純に比較できないが、海外の有名オーディオブランドは実に活気に溢れている、ように見える。違いはどこにあるのだろうか。海外製品をよく見ると、価格を二の次に「徹底した拘り」のある製品が多い事に気づく。国内メーカーにはそれがあまり感じられない。将来も世界から認められる優良ブランドであり続けたいのなら、まず最高品質を目指す事、そして機能面・性能面・デザイン面などで高いグレードのオリジナリティを確立する事。経営者にとって最も重要な素養は「マーケティング戦略」と「決断力」であると断言しておきたい。これはオーディオや家電メーカーに限らず、あらゆる業種のメーカーに共通する理念だろう。オーディオ業界にとっても、大手家電メーカーに限らず他業種の最先端技術を誇るメーカーが優れた製品を開発してくれる事がとても重要。何故なら、優れた製品は市場を活性化させる力を持つからに他ならない。また業界は違っても使われる最先端の技術や素材は部品レベルで同じだから、直接間接的にオーディオ業界に及ぼされる影響は少なくない。今日は長くなってしまったからこれくらいで止めておこう。当方も近い将来、完全に自己満足に浸れる(世間をアッと言わせる?)独創的なアンプ製品を開発したいと思っているが、果たしてどうなる事やら・・・。


2005.06.14

 私事だが、つい先日、20年以上元気に稼動し続けてくれていた自宅の冷蔵庫がついに昇天してしまった。永く働いてくれた事に唯々感謝。因みにメーカーは日立製。一家電製品がここまで長寿命に稼動してくれればユーザーとして文句は無い。同社の最近の商品がどうなのかは知らないが、お礼を云いたいくらい。がしかし、それにしても最近製造の家電製品は「すこぶる短命」に感じているが、如何。長くて7−8年も持てばまあ合格。短いと保証期間が切れるのを待っていたように故障してしまう。まるで時限装置が付いているがごとし。オーディオ・ビデオ系機器も同様。仕方なく修理に出すと福沢諭吉が何人も取られてしまう。特に大手メーカーは修理サービス事業も立派なビジネスにしているようだから仕方がないとは思うが、それにしても・・・である。

 ではどの辺りが故障するかと云うと、物にもよるが熱ストレスがかかる個所が殆ど。熱ストレス、つまり稼動中に発熱してその部品自体、或は周辺部品が輻射熱によって故障してしまう。電源のオン/オフを繰り返す事はつまり、メーカーが行うテンプ・サイクル或はサーマルショックと云われる試験を実施しているようなもの。毎日使う装置であれば日を追う毎に確実に寿命が短くなっていく。故障する部品を具体的に云えば、発熱する部品自体、半導体部品全般、ケミコン類、それに基板。発熱する部品は主にメカ部のモーター、電力系の半導体や抵抗など。半導体は自身で発熱しながらその熱よって動作特性が変動してしまう性質を持っている。だから余程しっかり放熱設計しておかなければならない。ケミコン類は、余程大電流を流す場合を除いて自身ではそれほど発熱しないが、受動部品の中では輻射熱などに最も弱い部品と云える。これは判っていてもコスト問題や入手性から皆仕方なく使っているというのが現状。現代の製造技術を駆使すれば長寿命ケミコンを作れる筈だが、そのコストは桁が違ってしまう。そして意外に基板も熱に弱いという事実を知らない方も多いのではないだろうか。近年は特に精密設計された基板が多用されているが、微細設計にすればするほど当然故障率が増える。その上実稼動時の輻射熱で部分的に熱膨張したり、振動が与えられたりと過酷な使われ方をするのが基板。最近特に多い多層基板に於いては、熱による膨張と収縮を繰り返される事で中側の層にあるパターンにクラック(ヒビ割れ)が入って導通不良が起こったり、はんだ付け部にクラックが入ってこれも導通不良を起こしてしまう。基板は昔から最も不良が多い部品であり、メンテ性が良くない上に電力系回路に不向き。これこそ当方ができる限り基板を使いたくない理由。一般的にメーカーは故障返品されてきた製品の修理の殆どは基板交換してハイ終わり。つまりは、「商品を売った後も儲ける」という仕組みを作り上げている大手メーカーが殆どだから、「買った価格以上」というほど生涯コストを支払ったユーザーも居られるのではないだろうか。わが国も自由競争市場だから仕方がないのだろうが、競合メーカーに負けず良い商品だと宣伝しながら、生産現場ではギリギリまで品質を落としてコストを抑え、下請け業者を叩いて更にコストを下げさせ、「保証期間中だけ故障しなければ好し!」という論法を地で行っているようなメーカーが、「一流有名ブランド」と世界中から持て囃されているのだから困ったもの。

 最近故障に関する懸念を持っている具体的商品名を挙げるとすると、何と云ってもハードディスク内蔵DVDレコーダーがそれだろう。どのメーカーのモデルであろうが、殆ど皆尋常ではない発熱量を誇る。筐体の中から排出されてくるファンの風にずっと手をかざして居られないほど熱風を出す機種さえある。そのようなモデルはおそらく、まさに時限装置が働いたごとく、保障期間が過ぎて間もなく故障してしまう事間違い無し。次に危ないのはプラズマテレビだろう。これは特に大きな一枚基板で作られているようだから、少なくない発熱から基板不良が起こる可能性が高いと思われる。まあ、挙げればキリが無いからこれ位にするが、現状一般民生の製品レベルはこの程度と理解しておいて間違いないだろう。日本の自動車メーカーは何故世界中で一定の指示を得て良いビジネスができているのだろうか。勿論その地域・民族に適したデザイン・機能性・走行性能・価格・サービス・燃費であるだけではなく、故障が少ない事が高く評価されていると聞く。何か起これば命に関わる商品を作っている彼らにとって、故障はメーカーとして命取りになり兼ねない。だから気が遠くなるほど厳しい検査にパスした部品だけを採用する。それだけではない。部品実装やケーシング、取り付け場所にまで細心の注意を払って、更に市場や顧客からのフィードバックをデータとして蓄積して次のモデルに役立てる。大手メーカーで自動車産業にだけは本来の「物作りの精神」が脈々と受け継がれている事がせめてもの救いだろう。一般民生機器にも自動車業界の理念が少しでも盛り込まれたなら、それだけでも相当良い商品になると思うのだが・・・。上辺だけの生産効率アップやコスト競争に躍起になって、生産拠点を安価な労働賃金の海外諸国に移管するのはよいが、肝心の「故障しずらい品質」の向上を怠ってしまうと、近い将来必ず近隣諸国の激安商品に打ち負かされてしまう事だろう。そうなりたくなければ、本来の物作りの精神を改めて学んでは如何、家電メーカーの皆さん・・・?


2005.06.11

 近年益々オーディオ・ビジュアル(AV)系業界が盛んに見える。個人的にもメーカーとしてもピュアオーディオ派の当方としては少し寂しく思っている。とは云っても、時代の流れだから仕方がない。横目で見ながらだが、最近のAVシステムの動向が少し奇妙に思える。AV系の最新音声規格は何と9.1chというではないか。一つのシステム中にスピーカーが9本にサブウーファーとは・・・。ピュアオーディオ派の当方からすると、2chでもチューニングが大変なのに、9chとはもう狂気の沙汰とすら思える所業。それならいっその事、部屋中の壁を隙間無くスピーカーで埋めてしまえば如何、と言いたくなる。以前、5.1chシステムのチューニングを手伝った事があるが、スピーカーの場所から高さや方角、そしてレベルに位相と、ある程度満足できるようになるまで数時間を要した。そして映画ソフトを真剣に見始めて間もなく気づいた事は、厳密に云えばリスナーはリスニングポジションから微動駄にできない事。それに鳴らされる音は音量も含めてあまりに凄すぎて長く聴いていられなかった。ガラスが割れる音や金属がぶつかり合う鋭い音を少しでもリアルに表現しようとしている為なのだろうが、ピュアオーディオ派の耳には刺激的に過ぎた。その友人、わざわざ高額なAVアンプや海外製トールボーイ型スピーカーを揃えたにも関わらず、その音質性能が自然音からかけ離れていたのには驚いたが、もっと驚いたのはその友人自身がその音に満足していた事。ピュアオーディオ派には理解不能な感覚だが、本人がそれで好いというのだから当方には文句の付け様がない。

 また、以前伺ったオーディオ愛好家はAVシステムも持っておられたが、AV用アンプ類はすべて真空管だった。その音はパワーやドライブ能力の所為なのか少し甘く感じたが、人の声が実に自然で聴き易い音だった。この方のようにトランジスタ系AVアンプで大出力にするより、真空管アンプでより自然な音を目指すのも悪くないだろう。AVシステムを極上に仕上げようとするなら、ピュアオーディオの数倍の予算が必要になるだけでなく、部屋の環境面や、感性も技術面も高いレベルが求められるようだ。これまで最も極上で凄いと思うAVサウンドを体験させて頂いたのは、海外有名メーカー製大型スピーカー同モデル5本(サブウーファー無し)と、これも同じく海外メーカー製ピュアオーディオ用スレレオパワーアンプ3台にて構築されたAVシステムを聴かせて頂いた時。システムトータル占めて2千万円超!という。また、その方の音造りは敢えて鋭敏さを控えめにするケーブル選びにあった事が興味深かった。それにしても、AV系システムや音声規格は何故難しい方向へと行くのだろうか。安易に物量投入して難しい方向へ突き進むより、ピュアオーディオ用システムにプラスするだけでAVシステムとしても使えるようにした方が遥かに容易に、そして安価に満足を得れるような気がするのだが・・・。


2005.06.08

 殆どのオーディオ愛好家の方は何らかのアクセサリなる小物を使っておられる事だろう。当方とてタンノイのキャビネットの下には重く分厚い御影石の板を敷いて、制振性能に優れた特殊金属で作られたインシュレーターを脚にして使っている。が、他にはアクセサリと云われる小物はまったく使っていない。その必要を認めないから。一般的にはアンプやプレーヤーに有効とされるボード類、インシュレーター類、部屋の隅に置く吸音材や反射板等など、使われている方が多いだろう。確かに有効に働く場合もあるだろうが、決してオールラウンドに使えるとは考えない方が好いように思う。音質が変わるという事は、特定の色が着いたと考えるべきだろうから。そんなユーザーの方達は考えた事があるだろうか。「何故アクセサリ類によって音が変わるのか」と・・・。理由は簡単。その殆どは音響的に好ましくない素材や形状が採用されているからに他ならない。例えばCDプレーヤー。インシュレーターを変えると音が激変するという話をよく耳にする。では、そのプレーヤーのどこに問題があるかと云えば、インシュレーターそのものより、筐体の底板が脆弱に過ぎる事が主要因である場合が殆ど。底板を重くて硬いしっかりした板材に換えるとインシュレーターなどまるで気にする必要がなくなるという事実からもそれが立証されている。過去に驚いたのは、超高額貴金属やダイヤモンドなど宝石類まで採用したインシュレーターが話題を呼んでいた事。上辺だけ繕うような事では何も解決しないのは、オーディオも同様。音が変わる根本原因がどこにあるのかをよーく考えてからアクセサリ類を選ばれたらよいだろう。一番好ましいのは、勿論アクセサリなど何も使わなくて済む装置を選ぶ事。とは云っても、市場に出回っているメーカー製品に豪壮な筐体でできた物など殆ど見かけない。だまされてはいけないのは、一見豪壮に見える筐体でも、単一金属で構成されていると、決まってその金属の音に染まってしまうという事。その多くはアルミ系板材の音。アルミ単一素材ならせめて無垢削り出しくらいは採用してもらいたいが、コストが・・・。

 尚、アクセサリにはケーブル類は含めない。何故なら、それがなくても機能する物はアクセサリに分類されるが、オーディオシステムはケーブルが無くては機能しないのだから装置同等に考えなければならない。だからケーブル類はアクセサリではない。異論を唱える方も多いだろうが、敢えて云わせてもらうとするなら、ケーブル類の理想は何といっても単線構造。何故なら、どんなに高純度でも撚り線では必ず音に何らかの影響が出るからに他ならない。スピーカーケーブルは勿論、接続ケーブルから、できる事なら電源ケーブルとて単線が望ましい。が、単線であれば何でも良いという事にはならない。通す信号電力や長さに応じて太さや構造を選ばなくてはならない。詳しく知りたい方は、この方面のプロ中のプロであられるベルテック社に問い合わされるとよいだろう。雑誌や販売店などで有名な国内外メーカー製の殆どすべて、同社製ケーブルにまず適わない、と云えるほど優れた性能を持つ。あくまでもモニター的に鳴らす必要がある我々メーカーにとって、どんなに評判が高くても撚り線ケーブルは殆ど採用できない。音色のどこかに癖のようなものがあると、アンプ類やプレーヤー類を何に変えても微妙にその癖が音に表れて本来の評価ができなくなるから。であるからこそ、ケーブルに求める性能は、あくまで一切色づけなく、入ってきた信号をそのまま通す事。ところが、これを実現できているケーブルなど殆ど見当たらない。一般オーディオ愛好家は、よく見る雑誌の評論記事など殆ど参考にならないという事を知っておくべきだろう。雑誌の試聴レポート記事は、そのケーブルの「癖」を評論しているようなものと云える。一般的には高温によるアニール処理や超低温によるクライオ処理などが施された単線ケーブルが入手できるだろう。がしかし、それでも完璧とは云えない。ケーブルには単純だがもっと奥が深い何かがあるようだ。その何かを知っているのがベルテック社と云えよう。嘘だと思われる方は、ご自身で確かめられるがよろしかろう。


2005.06.05

 ベテランオーディオ愛好家であってもハイエンド・オーディオシステムを愛用されている方でも、真に優れた音楽表現を実現できている方はなかなか居られない。そういう方々のシステムを数多く試聴させて頂いてきた中で感じる事は、その方の経験と個性、それに感性の品位が音に表れているという事。勿論、音楽表現の形は一つではないのだからそれぞれに違いがあって然るべき。ただ生々しい音楽を求めているだけではない方も居られるから、一概に優劣はつけられない。がしかし、使用されている機器の調整や活かし方によっては、もっと素晴らしい音楽が聴ける筈と感じる事が少なくない。どんなに優れた性能の機器によってシステムを構築しても、ただそれだけでは求める音楽を奏でてくれないであろうし、必ず練り上げる作業が必要になる。つまり、鳴らされる音楽の個性や品位は使い手の情熱と経験と感性次第で如何様にも変化するという事。であるからこそ、オーディオは面白いと云えるのではないだろうか。

 個人的には、若い頃から機会ある毎にオーディオのプロフェッショナルなる方々のオーディオ再生音をたくさん聴かせてもたってきた。有名JAZZ喫茶、ハイエンド機器専門の販売店、メーカーの試聴室、専門雑誌でお馴染みの有名評論家宅、個人の超ハイエンドユーザー、オーディオイベント等など。ただ聴かせて頂いただけではなく、不明点があれば質問攻めにしてしまった事も少なくない。快くお答え頂いた方々に心より感謝。この経験が大変役に立った事は言うまでもない。どう役立ったかは細かく述べないが、どれも皆大変個性的な音質の再生音楽であった。ただ、その時聴かせて頂いた音楽を今また試聴させて頂いたなら、おそらく違う感じ方をするに違いない、と思う。何故なら、当時はまだ経験が浅い為にあらゆる面で深く理解できなかった、と云える。現在は、経験を重ねる度に聴こえ方も理解の度合いも違ってくる、という事を実感している。おそらく、生涯変化し続けて、これで完全・完璧という事に至らないのが人間なのだろう。一般オーディオ愛好家の方も是非、他者のオーディオシステムを多く試聴されるようお勧めしたい。ただし、試聴させて頂くのだから、俄か評論家のような心境になったり、あら探しをしたり優劣をつけるだけの聴き方は厳禁。例え自身のシステムより遥かに劣ると感じる音質でも。ある意味、失礼極まりない事だから。そのシステムの音楽表現の特徴や個性、その理由や要因を理解する事で間違いなく自身の感性が磨かれていくだろう。オーディオ愛好家にはこの経験を積む事が大切。それが自身のグレードを向上させる確かな路である、と断言しておきたい。


2005.06.02

 これからの時代のオーディオを少し考えてみた。こうあって欲しいという個人的な願いも込めて。まずソース系だが、間違いなく携帯用にメモリチップ、家庭向けにはネット配信が主流になるだろう。またソースデータはレコーディングのマスターテープのデータをそのまま配信、というのが望ましい。そうなるとCDショップは要らなくなる?かどうかは判らない。現行主流のCD系円盤メディアは、高速で回転させなければならない上に、光ピックアップなるものでセンスしなければならないのだから、どう考えても「原理から致命的な欠陥を持っている」と云わざるを得ない。とは云え、それが現代の主流だから致し方ない。つまりは、次世代の高密度円盤メディアの規格・開発を競うより、早く回転メディアから卒業する事を考えるべきという事。アップル社の iPod shuffle や iTunes は次世代オーディオへの一つの大きなヒントを与えてくれている。

 次にアンプだが、やがてアンプという単体装置は存在しなくなるのかも知れない。ではアンプはどこへ行くかというと、おそらくスピーカー・キャビネットの中だろう。それもディジタル的に周波数レンジが制御された個々のドライバユニット専用のディジタルアンプが内蔵されて、ユーザーの側には広大なサイズの記憶媒体を内蔵した高機能ディジタル・プロセッサのみ。ユーザーが試行錯誤するエリアはそのプロセッサの機能範囲内に留まって、他に悩む必要など無くなっているのかも知れない。が、それでは少し寂しい。一足飛びにそこまで考える前に、アナログ式アンプが存在する時代がまだ当分の間続くだろうから、その近未来を想像してみよう。と言っても、現行から大きな変化が生じる何かがおこるり得るかと云えば、少し難しいだろう。何故なら、どのメーカーも皆、現行の回路構成、部品選択、デザインなどに満足しているように見えるから。何かを大きく変更する事はこれまでの自社製品を否定しかねないから、敢えて大きな変化を望まないのかもしれない。その所為か、技術的に行き詰まっている感じもする。が、それは急激な変化を求めない考えやコスト問題から来る自らの限界と云える。各メーカーのエンジニアはまだまだ面白いアイデアを持っている筈だから、それを形にする事がその限界を打破する路と考える。よりユニークで独自性のある製品が多く市場に出れば、オーディオ業界そのものが活気付くに違いない。

 但し、現状のトランジスタアンプの音質性能では遠からずディジタルアンプに取って代わられる公算が大きい。特に大手メーカーにとって生産性と利益の追求こそ最大の目標だから、作り易くコストパフォーマンスの高いディジタルアンプを主力商品にしたい筈。それが嫌なら補正回路尽くしの現行回路構成を卒業して、無駄に巨大出力を目指すより、少ない部品構成で真に優れた音質性能を目指すべきだろう。それが実現できればきっと多くのユーザーが欲しがるだろうし、ピュアオーディオからAV系まで誰もが満足できるオールラウンダーになる筈。当方からすると、これはそんなに難しい事とは思わない。要は発想の観点を変える事。コンプリメンタリ・プッシュプル、カレントミラー、全段直結、高NFB等など、間違いなく音に弊害を与えているであろう回路をいつまで採用するつもりなのか?と言いたい。では、真空管アンプはと云えば、半導体アンプがあらゆる面で真空管の音質性能を凌駕しない限りという条件は付くが、おそらく相当先の時代まで使われ続けるだろうと考えている。ディジタルアンプ全盛の時代になっても人間が純アナログサウンドを求めるのはある種生理的な欲求と云えるだろうし、回路や部品個々のグレードが益々向上していくと考えると、最新技術を駆使した半導体アンプに十分に対抗し得るものとして愛用されているに違いない。何故なら、どんなに技術が進歩しても人間の耳の品位や感性までは変わらない筈だから。

 さて、最も問題なのがスピーカー。先日もここに記したが、多々欠陥を持つ現行スピーカーシステムがいつまで使われ続けるのか、予想すら難しい。次世代スピーカーの理想はテレビ同様に薄型パネル形状ではないだろうか。それも小型で超低域から超高域まで難無く鳴らしてくれる優れた性能を備えて。ただ、空気に強烈な波動を与えるだけの振動エネルギーをどのような原理で創り出せば好いのか、具体的なアイデアは浮かばないが。一つ無責任なアイデアを述るとするなら、現在でさえソースからアンプまでディジタル化が可能なのだから、スピーカーだってディジタル信号によって振動板が振動する原理が可能になれば面白い。そうすればディジタルアンプすら不要になるだろう。真に次世代オーディオの時代になるのは、まったく新しい原理による格段に優れた性能のスピーカーが創られた時、と云える。少し寂しいが、それまでスピーカーもやはり現行のまま長く使われ続けるのかもしれない。おそらく次世代スピーカーが誕生するまではとても生きられないだろうから、まあ次代の人達への宿題?としておこう。


2005.05.31

 今も尚LPレコードを愛聴されている方が少なくない。その方達の気持ちはよく理解できる。アナログ系ソースを聴きなれた耳にはCDなどのディジタル系ソースの音質がお気に召さないのだろう。個人的には同感といった処。それどころか最近SP盤を楽しまれる方が増えてきている?という情報すらある。レコードソースがSP、LP、CDと進化していく中で音質上どのような変化が生じたのだろうか。SP盤の時代の音は、モノラルで繊細感に劣りレンジも狭いが、とにかく音楽的エネルギーが凄い。あの分厚い中音域はステレオLP盤でもCDでもSACDやDVDオーディオでも殆ど足下にも及ばないと云えるくらい。LP時代になって情報量が格段に向上する代わりにSP盤のようなエネルギー感がやや失われ、ステレオ時代になって音場表現が可能になった事からよりHiFi的な音質になった。そしてCD時代になると繊細なまでの豊富な情報量を手に入れる事ができるようになったが、エネルギー感や密度感や滑らかさという大切なものをどこかに置き忘れてしまったようだ。

 個人的には時々SP盤の音楽が無性に聴きたくなる。特に英国製HMVという蓄音機で聴きたい。かの蓄音機の音を初めて聴かせてもらった時、身の毛が弥立つほど「凄い!」と思うと同時に「オーディオの音質性能は時代とともに退化してる!」と真面目に思ったほど。米国ビクトローラ製クレデンザも素晴らしいが、現代的な明るい音色を聴きなれている耳には木製ホーンのクレデンザより金属製ホーンのHMVがより好ましく感じるし、モノラルなのに音場が詳細に感じ取れるのもHMVだろう。それに、唖然とするほどエネルギッシュで濃密な上に低域から高域まですこぶる音の立ち上がりが早いのだから、ある意味理想的なオーディオシステムと云えるのではないだろうか。ただ、クレデンザにしてもHMVにしても鉄針などによる多大な針圧の所為でSP盤の傷みがすこぶる早い事が何とも悲しい。

 現代オーディオ愛好家はSP盤の再生を是非LP用カートリッジで銘蓄音機並みの音を目指して欲しい。SP盤を現代オーディオシステムで再生するには、モノラル用カートリッジに78回転可能なプレーヤー、それにターンオーバーとロールオフをコントロールできるイコライザーアンプがあれば可能だ。但し、蓄音機のような分厚い音色にはなかなか鳴ってくれないから悔しい。その理由は簡単。現代の電子部品は殆ど皆過度なほどに広帯域だから。狭帯域部品など探してもまず見つからない。そこで考えた手法は2つ。イコライザー部の回路構成を変更して帯域を狭くするフィルタ素子定数を選ぶ、或は、f特のフラット領域100Hz〜8kHzというような狭帯域トランスを特注する、という辺りだろう。まあ、それでもクレデンザやHMVのような音色にはなかなかならないとは思うが、あとは時間をかけて試行錯誤あるのみ。HMVを聴いていて気づいた意外な事がある。それは、モノラルなのにきちんと位相情報が確認できた事。「シャー・・・パチ、パチ」という盤に着けられた傷によるノイズ音が手前に聴こえ、楽器音がやや後ろから聴こえた。現代のオーディオシステムでも同様に分離して聴こえたなら、そのシステムは素晴らしい位相特性を持っている事の証。そうでなければSP盤は完璧に鳴らせない。

 CDやSACDやDVDオーディオを愛聴しておられる現代のオーディオ愛好家達に云いたい。「たまにはSP盤もじっくり聴いて欲しい」と。SP盤こそ再生音楽の原点だから・・・


2005.05.28

 近年富に技術革新が進むディジタルオーディオ業界。その進む方向に少なからず納得できないものがある。その1、CDからSACDやDVDオーディオになったと思ったらもう次のフォーマットが企業間で争われている、というのは変遷が速過ぎやしないだろうか。その2、記録密度を上げただけの新フォーマットとは本当に音質的なメリットがもたらされるのだろうか。その3、CDとは本当に音質性能が劣っているのだろうか。言い換えれば現状のCDプレーヤーはソースメディアにある情報を真に100%再生できているのだろうか。その4、ディジタルプレーヤー機器はハイエンド機も含めて技術的に今の方向性が本当に正しいのだろうか。その5、レコーディング現場の音造りは現状が本当のあるべき姿なのだろうか。その6、・・・(疲れてきたから止め)。

 当方は相変わらずCD主体で音楽再生している。個人的にはそれで十分満足できる音質だと思っている。が、一般ユーザーと異なる部分がある。その個所は、D/Aコンバーター部とディジタルケーブル。特にDACチップにてアナログ変換されてからのアナログバッファ部が違う。決してOPアンプICや一般的トランジスタ回路など採用せず、I/V変換、フィルタリング、ノイズキャンセル、バッファリング各回路を極めてシンプルに構築している。ところが、メーカー製品のD/Aコンバーター部は殆ど100%近くOPアンプなどを採用して特性だけはとても優秀な回路にしている。そういう機器と当方の音質性能の違いは歴然。メーカー製品の音質傾向は広帯域で繊細で妙に鋭く、広がり感のある音場表現のものが殆ど。為に一般オーディオ愛好家はその音に違和感すら感じなくなってしまっているようだ。それがあるべき姿のオーディオ再生音とはとても思えない。また、メーカーはどうしても利益や生産性を追求するあまり、本来求めるべき音質性能を蔑ろにしているようにすら感じる。現状のオーディオシステムに於いてスピーカー同様に大きく音質性能を左右する部分がこのアナログバッファ部。であるからこそメーカーはここを軽んじてはいけない筈だが・・・。

 また、ディジタルケーブルにも少なくない音質劣化要因がある。市場で売られている殆どのケーブルは高周波特性と輻射ノイズに配慮して同軸構造を採っているが、ただそれだけでは劣化を招き、へたをすると弊害すら起こってしまう。出力される音響用ディジタルデータのビットレートはせいぜい十数MHzだが、その周波数を通す事だけを考えた性能のケーブルでは片手落ちだろう。何故なら、本来のディジタル信号とは一つ一つの信号の遷移スピードが恐ろしく速くなければならず、その上波形鈍りやリンギング現象も生じさせてはいけないのだから。これを考慮しなければ必ず音質劣化を招く事になる。現在愛用している特注ケーブルと比較試聴すればするほど、各メーカーはこの事をちゃんと認識しているのだろうか、という疑問が消えない。ここにもディジタル系ソースが持つ本来の性能が当たり前に評価されない要因があるようだ。


2005.05.26

 オーディオ愛好家の方々の認識は実に様々。以前よりアドバイザー的な業務を依頼されて数多くのオーディオ愛好家宅にお邪魔させてもらったり相談を受けてきたが、皆に共通して感じる事がある。それは、認識のちょっとしたズレや違いを、頑ななまでに「これが正しい」と決め付けている方が多い事。それがオーディオ愛好家としてのグレード向上の妨げになっている事に気づかないようだ。アマチュアだから仕方ないとは思うが、寂しくもあり悲しくもある実態。何故そうなるのかと少し考えてみた。目で見えるものは形や色から殆ど皆同じ認識を持てるが、耳に聴こえる音となると聴こえ方捉え方が一人一人違うために決して同じ認識にはならない。それにその方なりの経験や巷に氾濫している情報が加味されてその人固有の認識が生まれるのだろう、と認識している。また、お話しさせてもらうとすぐ判る事だが、その方が音楽愛好家であるかオーディオシステム愛好家であるかという違い、当方にとってはその違いがとても大きい。理想は両方兼ね備えていて欲しいが、殆どの方はどちらかに偏っているように感じる。音楽愛好家は自分が聴きたい音楽を明確に持っておられる方が多い事もあってブランドに拘らず、より良い音楽を奏でてくれる装置を選ぶ。が、オーディオシステム愛好家となると少し話が違う。その多くがブランド指向やハイエンド指向に走る。それでいて音楽を音楽としてではなく「音」として捉えているように見受けられる。つまりは、音楽愛好家はより好い音楽を聴く悦びに浸り、システム愛好家は有名ブランド高額製品を持つ悦びに浸っているのだろう。オーディオ愛好家はせめて音楽愛好家であって欲しいと願うばかり。

 当方からすると、一般オーディオ愛好家はまるで迷路を歩んでいるかのごとくに見える方が多い。雑誌評論記事や販売店の言葉に右往左往、オーディオ仲間の言葉にまた右往左往。真に優れたシステムは一日にして成らずだから、試行錯誤は多いに結構。やがてオーディオ仲間などから誉められ羨ましがられるような音が鳴り始めると、途端に自分のシステムの音が一番と思うようになり、それなりの主義主張を持つようになる。まあこれは人間として自然な傾向だろうし、仕方のない流れなのだろう。ところが、仮にスピーカーシステム選びに於いて、何をどう考えてという基本的な判断からズレてしまっているとどうなるか。後のアンプもケーブル類も決して正しいとは云えない物を選んでしまう事になる。不幸にもそんなベテラン愛好家が少なくない。始まりの一歩を間違うとすべてが狂ってしまうという事はオーディオにも当て嵌まる。だからこそ常に「音楽をより音楽らしく」という「基本・原点に立ち返る」意識をもつ事が肝要と考える。

 驚く事に、このシステム構築上の不備は愛好家に限らず、CD系ソースの録音グレードにも小さくない問題として表れている。最近のレコーディング現場では恐ろしく高額で複雑なデジタル機器を駆使して音造りがなされているが、その仕上げは勿論アナログ変換した音楽再生で確認されている。その再生装置、つまりプレイバック・モニター・システムに問題があるのではないかと思われるややバランスの崩れた音楽CDが少なからず存在する。仮にプレイバック・モニターの高域音が少ないと感じれば当然レコーディングエンジニアは高域レベルをもち上げる。がしかし、そのようにして作られたCDは一般的グレードのオーディオシステムでも自然な響きを失い、高域が煩く聴こえてしまいがちになる。低域音も然り。従ってレコーディング現場こそ、真に正しくモニターでき得るオーディオシステムを構築して欲しいし、アーティストが真に鳴らしたい音楽を想い、一人のオーディオ愛好家のつもりでソースをモニターして欲しい。更には、一般オーディオ愛好家にも先ずは音楽をモニター的に鳴らされる事をお薦めしたい。モニター的に鳴るシステムになればソース録音の良し悪しがより明確に判るだろうし、システム内の問題点すら判明し易くなる筈。ある程度それが実現できてから好みの音に仕上げるようにすればまず間違いはないだろう。だからと云ってプロ用モニタースピーカーを選ばれる事はお薦めしない。何故ならモニタースピーカーは通常、強大な入力に耐えるなど過酷な業務用途向けに作られている。という事は、一般家庭での音量などそのスピーカーにとって蚊が鳴くがごとし、と云った処。それではいつまで経ってもエージングすら施されず、本来の音質性能にはなりずらい。この事を知らず、オーディオ雑誌の影響からか多くの愛好家がプロ用モニターを使っておられる。そしてやや持て余しぎみの方が多い。完全ではないにしても市場にあるコンシュマー向けスピーカーシステムにモニター的素養を持ったモデルが少なくないと感じている。自身の耳を信じて改めて試聴されてみると好いのでは。モニター的な音質性能とは、音楽的にバランスが良い事、音に癖や歪が無い事、音の立ち上がりが速い事の3点が最低条件になるだろう。できれば能率が高い製品であれば尚好いのだが・・・。


2005.05.24

 今日は少し厳しい?内容になる。最近富にインターネット上に様々な情報が溢れている。事、オーディオ関連だけでも見始めると一日あっても足りないくらい。個人的にはメーカーのサイトより個人の製作記事や技術情報を面白く興味深く拝見させて頂いている。が、残念ながら心躍る革新的な情報は殆ど見当たらない。そればかりか、認識を間違えられているのでは?と思われる書き込みもたまに見受ける。が、まあアマチュアの世界の事だから害はないと思っている。ところが、メーカー或はプロフェッショナルとして運営されているサイトの記述に疑問が残る、又は納得し得ないものが少なくない。例えば、ずっと疑問に思っている事だが、最新技術を駆使した筈のメーカー製品が音楽表現に於いて旧モデルや真空管に劣ったり、妙に低い価格設定がなされている物が少なくない。何故そんな製品が市場に出てくるのか解せない。それはおそらく性能より企業利益を追求した結果なのだろう。「どうせ一般ユーザーには判らないさ」とばかりに。確かに一般ユーザーには判りずらい事が多い。広告コピーは立派でも、内包するエクスキューズを根本から解決するのではなく、補正回路などで逃げている物が殆ど、という事実もそう。これは数百万円もするハイエンド機器でさえ必ず行われている手法。ソース機器もアンプ類もスピーカーも殆どすべて。特に日本国内メーカーはその「小手先」技術の横行が目立つ。当然の事ながら、それでは真に優れた性能の製品にはならない。結果、オーディオ愛好家離れにつながったのであろう。

 メーカーではなくアマチュアでもない、オーディオの「専門家」と称する方の記述にも納得できないものが少なくない。その記述を読んだ一般アマチュアは殆ど皆疑問を抱かず鵜呑みにしてしまうだろう事を思うと、他人事ながら少し心が痛む。そんな専門家の記述に決まって述べられているのが決め付けた物言い。例えば、「スピーカーは大口径でなくてはダメ、インピーダンスも感度も低めの方が良い」、「ケーブル類は導体の純度が高ければ高いほど音が良い」、「アンプはトランジスタ(FET)A級増幅が最も音が良い」、「CDはアップサンプリングしなければSACDやDVDオーディオに遥かに劣る」、「LPレコードが一番音が良い」等々。本当にそうだろうか。納得できないし疑問が消えない。では、その専門家と称する方が持っておられるオーディオシステムがどの程度の音楽を奏でているかといえば・・・推して知るべし、といった処。
 同様の事は雑誌評論や製作記事にも見られる。雑誌の記事こそ一般オーディオ愛好家に与える影響範囲は計り知れない。一般アマチュア・オーディオ愛好家にとって、これら専門家の言葉こそが道標と思っておられる方も少なくないであろうから。個人的にはオーディオ機器の評論記事は殆ど見ないし読まない。何故なら、言葉を尽くし誉めちぎった記述ばかりで決して実情を客観的に述べてはいないものが殆どだから。専門雑誌を見るとしたら新製品と最新技術動向を把握するためだけ。まあ、メーカーの新商品を評論家が誉めちぎることで販売店が潤う構図が現代のオーディオ市場なのだろうし、彼らもビジネスなのだから仕方がない。
 製作記事も同様に殆ど目を通さない。回路構成、部品選択、配線や筐体デザインなど、過去に発表された記事と殆ど変わった処がなく、特性はともかく信頼性や部品寿命、ノイズや位相にまで言及した記事など殆ど見られない。更には掲載記事自体何の目的で製作・発表されたのか今一つ明確ではないものもある。つまり、決してプロフェッショナルではなく、アマチュアが製作した作品を発表しているに過ぎないと考えている。それでもその記事の製作者であり執筆者の方は「先生」と呼ばれているらしいのだから驚く。結果的にWEBサイトにあるアマチュアの作品と変わらない程度と言える。最近はWEBサイト上のアマチュアの作品の方がハイグレードと思えるくらい。
 賢いオーディオ愛好家は、ここに述べたオーディオ界を取り巻く現状と諸問題に毒される事なく、本来あるべき姿のオーディオを目指されるよう祈る。あるべき姿を目指すためのポイント、それは「基本に立ち返る」こと。少なくとも当社は真にユーザーを裏切らないメーカーであり続けたいと思っている。また、今後益々他メーカーと異なる独自の発想・技術・哲学にて製品を開発し、自己満足に浸りたいと考えている。そのための基礎開発に勤しんでいる今日この頃。


2005.05.21

 今日は少し長くなる。百年以上も昔から変わらぬダイナミック型の原理を使ったスピーカーシステム。益々技術革新が進む現代においても市場製品の90%以上が採用している。この現状こそオーディオ再生音のグレードが遅々として前進していかない要因の一つに思っている。創業以前からベルテック社と親しくさせて頂いている中で多くの事を勉強させてもらってきたが、特にスピーカーについては何度も目から鱗が落ちるほど未知の情報やノウハウをたくさん教えてもらった。唯々感謝。その殆どを実際に耳で確認し納得もできた。結果、現状世に在るスピーカーシステムの殆ど100%が幾つもの問題や欠陥を抱えていると認識した。が、それをメーカーもユーザーもまるで問題とは思ってもいない事がもっと大きな問題だろう。オーディオは「まずスピーカー在りき」が基本だから、根本に関わる最重要課題の筈だが・・・。
 では、スピーカーシステムのどこに問題があるかと云えば・・・、列挙するとキリが無い。大きな問題だけを挙げると、ドライバユニットの前に在るディバイディング・ネットワーク、ユニットの性能限界ギリギリまで使ったワイドレンジ化、最近よく観るトールボーイ型キャビネット、foをより低くするための重いコーン、等々。そして何よりメーカーのエンジニアがコンピューターなどで設計したまま、練り上げるチューニングという作業の痕が殆ど観られないのは誠に残念。その結果、どんな音が聴けるかと云えば、妙にワイドレンジでバランスが悪く、エネルギー感や密度感に乏しい。低域音や中高音以上で歪を感じたり、妙な付帯音があったり、ただドンシャリと鳴っているだけのスピーカーが少なくない。この事は現用タンノイに代わる優れた中・小型モニタースピーカーはないかと探している時に試聴した殆どのスピーカー製品で感じた。例え数百万円もするモデルでもこれらの問題を少なからず抱えているのには改めて驚かされた。
 とうとう欲しいと思える製品に出会えず迷い悩み抜いた末、ベルテック社に相談して小型スピーカーの製品化を提案し、1年以上も費やされてやっと実現した。それが現在リファレンス・モニターの座にあるBell's(ベルズ)。できる事なら自身で作り上げたいとは思うが、残念ながらベルズまでの音質性能に仕上げる技も経験も持ち合わせていない。そんな技はベルテック社でしか成し得ないだろう。
 ポイントを少し整理して云おう。まず、一般マルチウェイ・スピーかーのインピーダンス変動には驚かされる。可聴帯域内で小さくない山と谷がいくつも観られる(凄い)インピーダンス変動特性を知っているユーザーも多い事だろう。ドライバユニット単体でも大きく変動するのに、そこに貧弱な上に補正素子を多用した複雑怪奇と云いたくなるネットワークが通されるのだから尚更。コンピューターの設計通りネットワークを組み上げただけでは見かけ上設計者が望む特性にはなっても、優れた音質性能にはなかなかなってくれないし、へたをすると新たな問題を誘発してしまう。何故なら、クロスオーバーさせるドライバユニットの減衰特性、インピーダンス、位相、歪、キャビネットの特性などが絡み合って特有の音として現れるから。それは測定器だけでは確認しずらい部分であろう。一般的にだが、2wayのシステムでは中高域の女性ボーカルやバイオリンの帯域にクロスオーバーポイントが来てしまう。3wayシステムではチェロの中低域や男性ボーカルやピアノの左手の帯域と、バイオリンやピアノの右手のハイエンド近くにクロスオーバーが来る。どれも綺麗にエネルギー感豊かに鳴って欲しいポイントだろう。これをピークもディップも無く、位相ズレも歪も無く鳴らすようにするのは間違いなく至難の技。であるからこそ設計・開発者には豊富な経験と英知、度重なる測定と試聴が求められる。

 そして諸問題の核心部分。ほぼ100%のスピーカーシステムが持っている問題がある。それは主にウーファーというドライバユニットにある。殆どのメーカーはコストパフォーマンス高く、できる限り低い音まで鳴らしたい。だから磁気回路を弱くしてダンパーやエッジを軟らかくし、ボイスコイルとコーンにある程度質量を持たせる。そうすると、どうなるか。グラグラなコーンに慣性モメーントが働いて確かにより低い音が鳴らせるようになる。がしかし、その音はアンプが送り出した信号情報とはかけ離れた音になってしまう。何故なら、初速の追従性能が劣ってしまうためドライバユニットが立ち上がっている途中で次の信号が来てしまう。すると立ち上がり途中で立ち下がり始め、そのピークを迎えた頃には立ち上がり信号が既に遥か先を行っている。そこで聴こえてくる音はというと、ドロンと濁ったような低域音のみ。という事は、位相差バラバラの歪率100%!と云える音になる。これこそが100年以上昔、ダイナミック型スピーカーが開発された当初から解決されないままになっている致命的欠陥と言わざるを得ない。
 最近改めて話題を呼び始めている技術にMFB(Motional Feed Back)があるが、これはボイスコイルの動きと入力信号を比較して遅れ分だけ補正を掛ける技術。この技術は確かに音質改善の効果が認められるが、センスコイルを持つ特殊なドライバユニットが求められる。簡易的にマイクをセンサーにしたMFB方式も発表されたようだ。それでも一般ユーザーには十分な効果だろう。処が、MFB技術をもってしても完璧な解決には至らない。何故なら補正をかけた信号はアンプが送り出した元々の信号と寸分違わないとまではならないからだ。鳴らされる音はアンプが送り出した音ではなく、スピーカーオリジナルの音でもなく、MFB補正の音と云う事になる。あくまでもモニター的であって欲しい我々メーカーにとって、補正を掛けたスピーカーの音はリファレンス・モニターにはならない。音楽をより生々しく鳴らすには、立ち上がりの1/4波長こそすべてと云えるから。では、どうすればこの問題を解決できるかと云えば、慣性モーメントに影響されないまったく新しい方式のスピーカードライバを開発するしかない。が、それこそが難題中の難題。現状できる事は、せめて限りなく軽いコーンに強力な磁気回路を持ったウーファードライバを採用してキャビネットやネットワークを駆使する事が精一杯。それでも相当素晴らしい音楽が聴ける。他を知らないだけかもしれないが、これを真に実現しているスピーカーシステムは今の処ベルテック社製グランド・ベルのみ。世辞ではなく断言する。他メーカーも是非軽いコーンのスピーカーシステムを製品化して頂きたいと思う。
 誰か、慣性モーメントと無関係のまったく新しい仕掛けのスピーカードライバを開発してくれないだろうか・・・。


2005.05.18

 オーディオの再生音と生演奏の比較試聴はなかなか難しい。実際は同じ場所で同時間に比較試聴する事など不可能に近いため、ほぼ間違いなく時間も場所も違う環境で、一方を聴きながら記憶にある他方とを比較するのだから、事実上比較にならない。もう一つ、オーディオの再生音は記憶に残り易いが、生演奏の音は何故か記憶に残りずらい。経験から言えば、生演奏の音は捉え所がない感じに聴こえる。演奏する会場、演奏者、曲目、更には気候や自身の体調によっても聴こえ方が違ってくる。よって、まったく同じ音で聴こえる生演奏は2つと無いとも云える。その上聴き終わった後には細部の音の記憶が曖昧なものになり易いのだから困ってしまう。
 それでも数多く生演奏を聴いてきて習得した事がある。それは、ただ漠然と聴くのではなく、ターゲットの楽器や聴く音色のテーマを決めておいて、その音のみに意識を集中させる事。ただし、こんな聴き方では演奏会場で音楽に陶酔する事などできないが、致し方ない。商売柄自然とそうなったのだが、この聴き方を回数重ねる事でやっと分かってきたのがオーディオの再生音との比較感覚であり、生演奏の音を基準にした再生音の仕上げ方。
 今現在、生演奏とオーディオの再生音で明らかに違うと感じている部分、それは当然の事と云えば当然だが、生演奏には各楽器音に位相差がまったく無く、歪も全帯域まったく感じない。そして強靭なエネルギーを伴った超高速な音の立ち上がりを見せるかと思えば、身体に染み渡るほどどこまでも自然な響きの余韻・・・。これらを完璧に再現できているオーディオ・システムなど現状皆無であると断言する。位相一つ取ってもソース機器、アンプ、スピーカーと各々に違った位相特性を持っているのが普通。特にマルチウェイ・スピーカーではドライバユニット毎に位相特性がバラバラ。そうなるともう生演奏の音に近づける事すら難しい。アナログ・レコード再生音の最大のウイークポイントがこの位相問題だろう。
 ところが、オーディオでしか聴けない音楽もある。一般的にクラッシック音楽の演奏会場ではどうしても聴く場所の影響下に置かれて、本来の音色や響きと少し違う音が聴こえてしまいがちだ。考えるに、その演奏会場で最も明瞭な楽器音を聴いているのはやはり指揮者だろう。がしかし、最も良い音楽を聴ける場所はというと、指揮者の真っ直ぐ後ろ数メートルやや上部辺りの空中に違いない。だから昔からそこらに録音マイクを置く。現状可能な限りの英知を注ぎ込んで作り上げられたオーディオ・システムでその録音ソースを鳴らす時、まるで録音マイクのある空間位置に独り浮遊しいるかのごとく珠玉の音楽が聴ける。オーディオとはそれを可能にするツールだが、その音質性能は残念ながら生演奏にはまだまだ及ばない。
いつの日にか、これぞ生演奏そのもの!と思える再生音楽を鳴らしたいものだが、果たして・・・。


2005.05.16

 人間とは何と未熟で愚かな生き物であろうか。特に己は・・・。その時はこれが限界と思える英知を注ぎ込んで完成させた製品でも、時間が経つとともに至らない個所や問題点に気づいて未熟さを思い知る。ところが既に売ってしまった後となっては致し方ない。
 創業当初よりタンノイ社SYSTEM15DMTIIのドライバユニットをモニタースピーカーに使用してきた所為もあったのだろうが、機器の性能を100%把握するには至らずに居たようだ。このドライバ、当時はその優れた音質性能に惚れ込み、同時にその頃の財力の限界でもあったが「これ以上の物はない!」と導入に踏み切った。
 がしかし、である。3年経って、その思いは見事に粉砕された。ベルテック社製スピーカーによって。同社グランド・ベルという超ド級スピーカーを聴いた瞬間の事。更には同社ベルズという小型バーティカルツイン・スピーカーにも適わなかった。どこがかと云えば、音の密度、分解能、エネルギー、そして何よりスピードに。その上見事なバランスとともにレンジが広いのだから、まさに理想のモニター機だった。音楽を音楽らしく鳴らすにはレンジが広い狭いはそれほど重要ではないが、特にメーカーがモニター的に使用すべきリファレンス機にはこれらの性能こそ必要不可欠な条件と云えるだろう。小型のベルズでもその資質を完璧なまでに備えていた。グランド・ベルは流石に即導入とはいかないが、同社のご好意もあってベルズは何とか導入に漕ぎ着ける事ができた。
 このベルズ導入によってアンプやソース機器の性能が手に取るように把握できるようになった事が何よりの収穫。また、まずスピーカーありきがオーディオの基本である事も再認識させてもらった。そして近未来必ず実現したい事、それは4Ωインピーダンスのベルズを完璧に鳴らせるアンプの開発。そのアンプが製品化できれば、多くの顧客も満足してくれるに違いないが、その前に己自身の満足が先決。今、SYSTEM15DMTIIはベルズのスタンドと化している。


2005.05.14

Ex.Field は、この5月でめでたく丸3年を迎える事ができた。道程まだプロローグを過ぎたばかりといった処か・・・。
 目指すものは、「音楽家やアーティストを我眼前に招待する」ためのオーディオ装置を創り上げる事。これは設立以前から変わらない理念・理想。 がしかし、この3年で様々な問題が観え始めた事に加え、根本的な部分に大きな変化が生じた。その変化とは、おこがましくも、しかも漠然と「顧客を満足させたい」などと考えていたが、それが愚かな間違いであると気づかされた。メーカーだからこそ物作りの基本とすべき事、それは「完璧な自己満足」の追求。何故なら、己が完全に満足できない製品を他人に売る事こそ蛮行に値すると云える。言い換えれば、一人のプロフェッショナルとして可能な限り妥協を排し、己自身が真に欲しいと思える製品を開発すれば、自ずと顧客を完璧な満足に導けると確信する。従って、ただ安価を売り物にする事なく、勿論他社類似製品なども製品化しない。積上げてきたノウハウと選りすぐった物量を投入し、渾身の念いを込めて作り上げる のだから。
その為にも、己を磨き抜かねば・・・。



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